2016年12月 のアーカイブ

SEのためのこれだけは知っておきたい経理知識  はじめて学ぶ連結会計

2016年12月21日 水曜日

JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)セミナーの講師を務めます。

企業会計は親会社の単体会計からグループ会社を包含した連結会計が主流となっています。しかしながら、連結会計は経理業務の中でも特殊な領域で、通常の経理処理とは違った知識や考え方が求められます。

その結果、情報システム部門内に連結会計の担当者を育成できず、全社最適を実現すべき基幹システムの中でも連結会計領域だけが経理部門任せになり、経営管理情報を効率かつ迅速に把握することの阻害要因となっています。

本セミナーでは、経理知識はあるものの連結会計はこれからという方を主な対象に、難解な連結会計を平易な演習を交え、連結会計の基礎知識を学び、経営管理に役立つためのシステム化における留意点をご紹介いたします。

1.連結会計とは何か

-連結決算の必要性

-連結決算の作業ステップ

-決算日と会計方針の統一

-連結範囲の決め方

2.グループ会社の財務諸表の単純合算と外貨換算

-連結パッケージと連結決算スケジュール

-グループ各社の勘定科目体系と財務諸表の単純合算

-会計方針の相違による個別財務諸表の修正

-外貨換算の会計処理と為替換算調整勘定分析

3.内部取引の相殺消去

-取引高と債権債務の相殺消去

-棚卸資産の未実現利益の相殺消去

-固定資産のみ実現利益の相殺消去

-非支配持分の利益按分

-投資と資本の相殺消去

4.持分法

-持分法の適用会社

-原価法/低価法と持分法

-全部連結と持分法

-未実現利益の消去

5.マネジメントアプローチによるセグメント情報への対応

-事業別セグメントと地域別セグメント

-マネジメントアプローチによるセグメント情報管理

-IFRSとの関連(減損会計、売却目的資産、廃止事業)

-財務(制度)連結と管理連結との一元化

6.グループ経営管理における課題

-グループレベルでの組織設定と科目体系

-個別会計と連結会計との位置付け

-グループ共通会計システムの構築上の留意点

-IFRS適用とシステム対応

セミナー詳細
対象 会計システムの開発・保守を担当されるSE、プロマネ
簿記・会計の基礎知識(簿記の仕訳、会計用語、勘定科目の理解)がある方
開催日時 2017年1月30日(月) 10:00-17:00
会場

一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会

〒103-0012 東京都中央区日本橋堀留町2-4-3 ユニゾ堀留町二丁目ビル2階 TEL03-3249-4102

企画・経理部門向けコラム ~業績管理~

2016年12月17日 土曜日

実効性のある予算制度と事業計画の作成

好きなスポーツのチームが負けた時、その監督の話を聞いて釈然としないことはありませんか?

「自分たちの試合ができなかった」(自分たちの試合って何?)、「十分な準備ができなかった」(試合日程は決まってたのに)、挙げ句には「相手が強かった」(そんなことわかってるでしょ!)

 他にも多々あろうと思いますが、釈然としないことの多くの理由は結果を「たら・れば」で評価していることにあるのではないかと思います。

こうしたことは、月次経営会議などの経営の現場にもあるものです。そこで、『しっかりと「管理」をせい!』と掛け声がかかるわけですが、この「管理」とは何を管理するのでしょうか?

と、いきなり言われても答えに窮するかもしれません。しかし、『「何を」管理するのか』の「何」が特定できないと管理のしようもないものです。

ここでは、

①「予算」を管理する

②結果が出るための「プロセス」を管理する

③勝つための「居場所」を管理する

と3つに分けて述べていきたいと思います。

①「予算」を管理する

経営における管理とは、PDCAサイクルを実行すると定義つけることができるものです。

PDCAサイクルとは、企業の活動を、Plan-Do-Check-Action(PDCA)という観点で管理するフレームワークで、

①Plan:目標を設定しそれを具体的な行動計画に落とし込む。

②Do:組織の中での役割を決めて人員を配置し具体的な行動を指揮して実行する。

③Check:成果を測定・評価する。

④Action:必要に応じて修正を加える。

一連のサイクルが終わったら、反省点を踏まえて次期へのプロセスへ入り、次期も新たなPDCAサイクルを進めるというものです。

 ここでのPLANがまさしく「予算」に該当するものです。予算がなければそもそも何を管理しようということが確立されなくなり、人によって管理のための言うことが違うということになりかねません。

 したがって、経営管理を行うに際して予算管理を行うことについては基本中の基本と位置付けることができます。

 また、予算を策定していくことに際し、それを実効性あるものにするには、これから述べることが重要です。

② 結果が出るための「プロセス」を管理する

 例えば、サッカーで「2:0」で勝ちたいとの目標があるとします。ここで、2点とるためにどうすればいいかのための戦略が何もなく、ともかく2点とって0点に抑えるのだと言っても実力を伴って勝つことはできません。

どうすれば2点とれるのか- ボールの支配率を高める、パスミスをなくす、運動量(走る量)を高める、というプロセスを定め、そのプロセスを高めるように管理すべきです。

よく結果が大事なのか(たまたまの結果かもしれない)、プロセスは評価してくれないのか、ということが議論になります。ここで大事なことは結果であることは言うまでもなく、スポーツでもビジネスでも結果で評価される世界であるべきでしょう。

しかし、結果を出すための行動の評価を結果だけで評価してしまうと「たら・れば」の評価になってしまうものです。そこで必要なことは、結果を出すためのプロセスを戦略的に定め、そのプロセスの実行状況を評価することを結果を評価することに加えることです。

業績管理はどの会社でも行っているものと思いますが、多くの会社が、売上や利益といった結果指標だけを管理しているように思われます。売上や利益の目標を達成するために、プロセス指標を定めてそれを評価していくことが有効です。

③ 勝つための「居場所」を管理する

 もし、多くの居酒屋がある繁華街の居酒屋の店長に就任したらどのように業績を伸ばしていきますか?

 例えば、他の居酒屋とメニューが同じ、座席も同じと、何ら特徴がない店にしてしまったら、既存の居酒屋に顧客は流れていくでしょう。こうした場合は、値段を下げることしか顧客を取り込むことができなくなり、価格競争の悪循環に陥ります。

 居酒屋を営む場合、全ての見込み客を想定するようにしてしまうと特徴がなくなってしまいます。そこで、料理のジャンル、顧客層、価格帯、どのようなことを差別化していくことが有効です。

 また、「選択と集中」と言われるように、自社の得意とする事業分野を明確にして、そこに経営資源を集中的に投下することも有効です。経営資源が無限にあるという理想的な環境は永遠に訪れません。資金や人といった経営資源は限られています。その限られた資源をどこに投下するか-。それを策定していくことが経営です。

 これまで述べてきたように、企業は持続的な成長を遂げていくために確固とした経営管理を行っていく必要があります。

企業の経営環境の変化は激しく、企業はこれまで以上に、「経営スピードの向上」「経営の見える化」が求められています。さらに、企業が取扱う会計データの件数は増加しており、高性能かつ柔軟な会計システム基盤の構築が必要になってきていることも銘記しておきたいものです。

経理部門向けコラム~決算の早期化~

2016年12月17日 土曜日

決算の早期化

「決算早期化」というキーワードを10年以上も聞いているような気がする。たかだ決算、されど決算というか、早くやれば済むものなのに、なかなかこの経営課題は解決されない。企業にとって解決すべき課題が長く解決されない状態が続くのはよくない。

早く済ませれば良いだけなのに、なぜ課題解決が長引くのだろうか。

早く済まそうと思ってもできないもの

「早く済ませればいいのに、それができないもの」そういうのが世の中にないかと探してみると、所得税の確定申告の提出がある。提出期限の3日前、当日に税務署に行くとわかるものだが、列をなして申告書を提出する人達がいる。

還付申告であれば早く申告すれば早くお金が返ってくるし、テーマパークの乗り物に乗るのに行列で待つのならともかく、税金の申告をするのに待つのはバカバカしい。早くすればいいのに・・と思うし、国税庁も早く済ませるための施策や呼びかけをしているが、相変わらずギリギリに提出する人が多い。

 確定申告の例もあるが、子供の夏休みの宿題にも同じようなことがいえる。早く済ませればいいのに、夏休みの宿題を早く済ませる優等生を見つけるのは至難の技だ。

 なぜ、ぎりぎりまで宿題をやらないのか-。このことは日本中の父兄が知りたがり、そして、困っていることであろう。

 「早く済まされば得」ということでもあれば、急かすこともしやすいが、早くしても得となることも見当たらず、早くしろと言い続けると、うるさいと嫌がられる。決算早期化も同じようなことが言えるような気がする。

決算を行うための前提となること

ただし、企業の中には早くしろと急かさなくても、従業員が早く行う処理がある。たとえば経費精算処理である。社員が立て替えた出張経費などは、精算を行わないと立替金が返ってこないため、いつまでに精算処理を行うという督促処理をしなくても従業員は前向きに精算処理を行うものである。それでも、決算時には正確な決算を行うために「?日までに経費精算を終えてください!」という趣旨の督促メールが届くものである。

締め日を設けて入力を必要とするものは、経費精算だけではなく、他にもあるものである。さらに、販売システムや人事システムが会計システムと異なる場合には、これらのシステムからのデータ転送も決算の準備として必要な作業となる。

決算早期化の阻害要因の多くは、決算処理そのものでなく、決算に必要なデータがタイムリーに入力されていないことにあると認識すべきである。そして、その締日を要する処理について次のように見直してみるのはどうだろうか

①締日を設けなくてもリアルタイムに取引発生時に処理を完了させるようなことに変更できないか

②締日を月末月初から月中の一定日に変更できないか

③システムが連動していない場合には、統合システムを再構築できないのか

決算値が固まった後の作業

決算に必要なデータが入力され、決算処理が終わると決算値が固まることになる。決算値が固まると決算が終わるかと言えばそうではなく、報告資料を作成するという作業が残っている。この報告資料を作成することに意外と時間がかかったりするものである。例えば、A3用紙に1枚でまとめるということや、増減分析の説明などがある。

また、役職の高い方は、デジタルデバイド(コンピュータやインターネットを使いこなせない状況)があるので、報告資料を紙でまとめないといけないという状況もある。

ところが、最近の実情ではデジタルデバイドはほぼなくなったといってよく、高役職の方でもコンピュータやインターネットを使いこなせるようになってきている。

こうしてみると、決算値が固まった後、報告資料を作成することに時間がかかっているのであれば、その時間をロスしていることを明記すべきである。上司に報告するための資料作りに時間がかかり、上司の判断が遅れてしまうより、報告の体裁など気にせず、一刻も早く上司は実情を知るべきであると思うし、それが経営管理というものだ。

そこで、デジタルデバイドもなくなってきている現代であるから、決算資料を部下が作って上司に報告するということは排除し、上司自ら決算値をシステムに見にいくような環境を構築することを推奨する。昨今、データウェアハウスやビジネスインテリジェンスと呼ばれる、レポーティングシステムが発達している。

決算値を固めるためのお化粧

ある経理部長が、決算調整をしなければ決算はすでに完了している、とボヤいていたことがあった。その決算調整は「粉飾?」と聞こえるかもしれないが、節税と脱税の明確な違いを言い切れないように不正と言われない許容範囲の中での決算調整はあり得るものだ。

その多くは、棚卸資産や営業債権の評価、引当金の計算、原価差異の処理などで、そこには経理担当者の判断が介在する。

しかし、その判断というものは本当に必要なのだろうか。AI(人工知能)が発達してくれば、そうした判断の仕事もコンピュータが行えるようになる。また、人間が判断しないと仕事が終わらない属人化の作業領域を持つことは企業にとってもよろしくない状況ではないか。

近い将来、AIが発達して判断を要する経理処理もコンピュータで賄える時代がくるものと予想する。

その頃には、「決算早期化」という課題の言葉自体が消滅し、取引が発生すると、その時点で処理が完了し、「決算書出力」というボタンを押すと、その時点での決算書が出力できるようになっているであろう。